「古事記の歌謡」と「ギリシア・ローマ抒情詩」の基本的異相  第10回 (全14回)

第四章 美人・健康・酒讃歌 

② 健康讃歌

         健康と若さを単純に讃嘆……記歌二首
               vs
         老いや死があるから健康がありがたい……GR詩三篇





     健康などいらないと言う人はいない、というのも世界共通の真理のようで、「記歌」にも「GR詩」にも健康や若さを讃える詩はあります。しかし、両者には相違点があり、「記歌」が健康と若さを単純に讃えているのに対し、「GR詩」には、老いや死を強く慨歎する詩も多く見られます。このような強い慨歎の詩歌は「記歌」には見られないものです。まず、「記歌」二首を見ていきます。




   (ⅰ) 若さを讃え、うらやむ歌

日下江(くさかえ)の入江の蓮
花蓮 身の盛り人
羨(とも)しきろかも。 

(河内の国の日下の 入江に蓮が生えています
 その蓮華のような 若い盛りの人は
 羨ましいことです。   歌謡番号96)





   (ⅱ) 倭建命(やまとたけるのみこと)が戦いに疲れ、命果てようとした時に詠んだ歌

命の 全けむ人は、
畳薦(たたみこも) 平群の山の
熊白檮(くまかし)が葉を 
髪華(うず)に挿せ。その子。

(若い 生命の満ち満ちている人は、
 平群の山の
 りっぱな樫の木の葉を
 かんざしに挿しなさい。おまえたち。   歌謡番号32)





     次に、「GR詩」を見ます。三篇ありますが、上記の「記歌」二首と比較すると、老いや死への慨嘆が、はるかに強い内容になっています。




(ⅰ) どれほど立派な知恵といっても、ありがたくはない、
    もし人が、あらたかな健康を欠く場合には。    シモーニデース(前出)




(ⅱ) イーシアースよ、
    香ぐわしい息吹を君が、
    たとえ没薬よりも十倍もいい香を君が漂わせても、
    起き出して、そのいとしい手に、
    この花の環を 受けとりたまえ。
    今でこそ かく咲き匂う花の髪飾りも
    あしたの朝には
    褪せて萎れているだろうから、
    君の若さのシムボルともして。    マールクス・アルゲンターリウス(AD1~2)




(ⅲ) 薔薇の花、
    花のさかりは
    ひとときか。
    過ぎされば、
    探してみても花はなく、
    あるのは ただただ茨のみ。     詠み人知らず





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